さて、このブログの読者の中にはこう思う者もいるだろう。
おまえの親父ひどくね?
たしかに僕の親父は酷い人と思うし大人気ない。
振り返れば、空手を始めるまで、親父は僕のことを認めてくれたことはなかった。勉強も運動も何にもかも。
できないことに対して、小馬鹿にされたり、「なぜ出来ないんだ」と怒鳴られたこともあった。
「いや、理由とかじゃなくて、できねぇから、できねぇんだよ」って心底では思っていた。だから、大体のことは年齢を経るまで出来なかった。
勉強、運動、自転車、縄跳び、女の子と話すこと、1人で買い物、靴紐を結ぶこと、ケーキを6等分に切ること。
なにもできやしない。
今考えるとそりゃ怒鳴られるわなぁと思う。
親父と僕は喧嘩したりしたこともあったし、長いこと口を聞かないこともあった。まぁ、僕よりも30歳近く歳上の人間のやる行動ではない。
ともかく、親父は厳しいというか偏屈で気難しい人だった。だから、僕はいじめが発覚してから親父とあまり口を聞かなかった。
だけど、空手の道場まで車で送り迎えをしてくれた。
まぁ、空手の道場まで送り迎えをする30分間もずっと黙ったままだった。
さてさて、話は切り替わる。
そこから時間が進んで、僕が空手をやめた日。意外と道場のみんなはあっさりしていた。じゃあな、元気でなって具合に。色んな先輩から激励をもらって、胴上げもしてもらった。
最後の日はそんな感じで終わった。
送り迎えの車の中で、親父はそんな最後の日に重い口を開いた。
「今までよーやったな」
また話は切り替わる。
さて、その後も僕は空手を続けたのか。
答えはノー。今の今まで空手はしていない。
僕は空手をやめた。高校に入る前、受験を名目で道場を退会した。僕はそれっきり空手もしないし道場にも顔を出していない。
高校は中学の友達が全くいないような遠方の私立校に通った。いじめられた過去をキッパリ忘れるために。空手をやめたのも同じような理由だった。
結局、空手ばかりに依存してしまい、逃げ道を作ってしまう。だから、キッパリと縁を切って、人生をやり直した。
帯も道着もプロテクターも大学に入る前に廃棄した。
古いブログ、10年以上も前の道場ブログの写真だけが、僕があの瞬間、空手をして生きていた証明になっている。
過去を捨てて違う人間になるために。そして、僕は違う人間になれた。
のかも知れない。
実際はどうかわからない。
このブログを通じて誰かに勇気を与えたいわけでもないし、僕をいじめた人間よりいい人生を送ってやろうとも思わない。
そんなの不可能だし、絶対になれないし、できないと思う。
これは、ただの個人的な昔の話。
死体のように生きていた数ヶ月、空手をしていた2年間、死ぬ気で戦った5分間、上段蹴りを繰り出した一瞬。
僕の人生が変わったのは、紛れもなく、あの瞬間だった。
あの瞬間、僕は何かになれた。
昔、僕はピーター・アーツになりたかった。
ピーター・アーツになれなかったし、過去からはやっぱり逃げれないかも知れない。
だけど、僕はマヌケじゃない何かになれたと思う。